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もはや声というより、奇声と呼ぶ方が相応しいかもしれない。 本能の赴くままに発したのか、まるでヒトが野生に戻ったようですらある。 ここにはアレアのヴォーカリストとしての姿は希薄だが、優れた実験精神と インプロヴィゼイションを演る求道者としての姿があった。 人間の持つ「声」の可能性を追求し続けた男のひとつの記録が本作である。
多幸感からか、顔の筋肉は完全に弛緩しているに違いない。 何かを思い出したかのように突如トラディショナル・ソングを引用する演奏陣に、 ヘラヘラと笑いを堪えながら録ったヴォーカル。また、それを平気で採用する神経。 そのすべてが緩く、無責任で、まるで規律やを禁忌を放棄してしまっている。 自由が幸福を生むと考えられていた時代の落とし子による、脅威の脱力盤である。